
みなさん、こんにちは!
太陽が沈み、辺りが暗闇に包まれる時間帯。多くの人が家路につく中、釣り人たちの心は逆に燃え上がります。そう、「夜釣り(ナイトゲーム)」の開幕です。
「夜は釣れる」とよく言われますが、実際のところどうなのでしょうか? 「昼間は全然ダメだったのに、暗くなった途端に入れ食いになった!」という経験をしたことがある方も多いでしょう。逆に、「真っ暗で何も見えないし、アタリもないし、ただ怖いだけだった…」という苦い経験をした方もいるはずです。
実は、太陽の光が消えることで、水中の世界では劇的な化学反応と生態系のシフトが起きています。夜釣りは単に「暗い中での釣り」ではなく、魚の感覚器官(視覚、側線、嗅覚)の使い方が昼間とは全く異なる、別次元のゲームなのです。
今回は、なぜ夜になると魚の警戒心が解けるのか? 満月と新月ではどちらが釣れるのか? 季節ごとの夜の海・川で何が起きているのか? 初心者からベテランまで、夜釣りの勝率を飛躍的にアップさせるための「夜の科学」を深掘りして解説します!
1. 昼間との決定的な違い。「光」が消えることで始まる水中ドラマ
太陽が沈み光が海や川から消えると、まず一番弱い生き物たちが動き出します。 植物プランクトンや、光を嫌って底に沈んでいた動物プランクトンが、安全な夜を待って表層へと浮上してくるのです。これを「日周鉛直移動(にっしゅうえんちょくいどう)」と呼びます。
プランクトンが浮上すると、それを食べる小魚(アジ、イワシ、ボラの子など)が集まります。そして、その小魚を狙って大型のフィッシュイーター(シーバス、メバル、太刀魚、ブラックバスなど)がシャロー(浅瀬)へと突進してきます。 つまり、夜は「食物連鎖のステージ」が水面近くや浅場へと一気に移動する時間帯なのです。
さらに、昼間は鳥などの外敵から身を守るために障害物(カバー)や深場(ディープ)に隠れていた魚たちが、暗闇という「最強の隠れ蓑」を得ることで警戒心を極限まで下げ、大胆にエサを追い回すようになります。 夜釣りが釣れる最大の理由は、この「エサの集中」と「警戒心の低下」が同時に起こるためです。
2. 魚は暗闇でルアーが見えているのか?視覚と「側線」の科学
ここで一つの疑問が浮かびます。「真っ暗闇の中で、魚はエサやルアーを見つけられるのか?」
結論から言うと、「魚は私たちが想像する以上に、夜でもよく見えているし、感じ取っている」です。
魚の網膜には、明るい場所で色を識別する「錐体(すいたい)細胞」と、暗い場所でわずかな光を捉える「桿体(かんたい)細胞」があります。夜行性の強い魚(例えばメバルやシーバス、ナマズなど)は、この桿体細胞が非常に発達しており、人間にとっては真っ暗闇でも、星明かりや街灯のわずかな光を増幅して、獲物のシルエットを捉えることができます。
しかし、視覚以上に夜の釣果を左右するのが「側線(そくせん)」と「嗅覚(きゅうかく)」です。 側線とは、魚の体の側面にある感覚器官で、水流の変化や水中の微細な振動(波動)を感じ取ります。夜は視界が制限される分、魚はこの側線センサーの感度をMAXに引き上げます。 また、ウナギやアナゴ、クロダイなどの夜行性底生魚は、匂い(アミノ酸)を頼りにエサを探す嗅覚が異常に発達しています。
だからこそ、夜釣りでは「リアルな見た目」よりも、「水をどう動かすか(波動)」「どんな匂いを出すか」が昼間以上に重要になってくるのです。
3. 季節で激変する夜釣りの顔。春夏秋冬の生態学と攻略パターン
夜釣りは季節によって、狙うべきターゲットや海の状況が全く異なります。
- 春・秋の夜釣り(適水温のハイシーズン) 水温が安定し、昼夜問わず魚の活性が高い季節です。特に秋は冬に向けての「荒食い」があり、シーバスやアオリイカのナイトゲームが最盛期を迎えます。ただし、秋の急な冷え込みによる「ターンオーバー(水底の悪い水が表層に湧き上がる現象)」が起きると、夜でも急激に魚の活性が落ちるため、水質の変化には要注意です。
- 夏の夜釣り(夜潮の恩恵と涼しさ) 人間にとって、うだるような暑さを避けられる夏の夜釣りは最高です。科学的にも夏は大きなメリットがあります。夏場は昼間よりも夜の方が潮の干満差が大きい「夜潮(よるしお)」になる傾向があり、夜に強い流れが発生して魚の活性が上がります。アナゴ、ウナギ、太刀魚などが絶好のターゲットです。虫よけ対策は必須です!
- 冬の夜釣り(クリアウォーターと夜行性の主役たち) 冬はプランクトンが減少し、水が非常にクリア(透明)になります。冷え込みが厳しいため全体的な活性は下がりますが、この低水温期に夜の主役となるのが「メバル」や「ヤリイカ」です。透明度が高いため、少しの光でも魚に警戒されやすくなります。常夜灯の明暗の境目(シェード)に潜む魚を、いかに繊細に狙うかが勝負の分かれ目です。
4. 月明かりの罠。「満月」と「新月」はどちらが釣れるのか?
夜釣りの重要なファクターが「月」です。大潮や小潮といった潮回りだけでなく、「月の光量」が釣果を大きく左右します。
- 満月(大潮回り)のメリット・デメリット 海全体が月明かりで照らされるため、プランクトンやベイトフィッシュが広範囲に散らばります。それに伴い、フィッシュイーターも広範囲に散るため、魚の居場所(ポイント)を絞りにくくなるのがデメリットです。しかし、ルアーのシルエットがはっきりと魚の目に見えるため、遠くからでも発見されやすいというメリットがあります。
- 新月・闇夜(大潮・中潮回り)のメリット・デメリット 月明かりがない新月や曇りの夜は、人工的な光(常夜灯など)の効果が絶大になります。暗闇の中で唯一光る常夜灯の下にプランクトンが密集し、それを追って魚も一箇所に大集結します。「ポイントが絞りやすい」という意味では、圧倒的に新月(闇夜)の方が釣りやすいと言えます。ただし、ルアーが見えにくいため、波動や音によるアピールがより重要になります。
5. 夜の釣果を倍増させるルアーカラーとアクションの真髄
夜のルアーフィッシングにおいて、「どのカラーを使うか」「どう動かすか」には明確な科学的根拠があります。
【夜の最強カラーは「黒」と「グロー(蓄光)」】
意外に思われるかもしれませんが、夜釣りの最強カラーの一つは「ブラック(黒)」です。 魚は下から水面を見上げて獲物を探します。夜空(わずかな光がある)を背景にした時、最もコントラストが強くなり、シルエットがくっきりと黒く浮かび上がるのがブラックなのです。 一方で、月明かりすらない真っ暗闇や、濁りが入っている時は、光を蓄えて自ら発光する「グロー(夜光)」や、わずかな光を反射する「チャート(蛍光イエローなど)」が、視覚的なアピールとして効果を発揮します。
【アクションは「超スロー」が鉄則】
夜は魚の警戒心が低いとはいえ、視界が悪い中でエサを捕食するため、魚自身も慎重に狙いを定めています。昼間のような激しいジャーク(竿を煽る動作)や早巻きは、魚がルアーを見失う原因になります。 「ルアーが動くか動かないかギリギリのスピードで、一定の層(レンジ)をゆっくりと巻く(ただ巻き)」。これが、夜の側線を刺激し、確実に口を使わせる最強のアクションです。
【おすすめルアー】
「ダイワ モアザン ガルバ 73S」 シーバスのナイトゲームで、表層をゆっくり、確実な波動で引いてこれる超定番ルアー。(リップ付きのシンキングペンシルという特殊な構造で、初心者でも「ゆっくり巻いても沈みすぎず、水面直下をフラフラと泳がせる」ことができます。夜のシーバスには劇的に効きます!)
「エコギア(Ecogear) アジ職人 アジマスト 2インチ」 ライトゲーム(アジ・メバル)なら、匂いと味で嗅覚に訴えかけるワームが必須です。(カラーは「ピュアクリアホロ」や「グロウ(夜光)」がおすすめ。微波動と強烈な集魚成分で、見えない夜でも確実に魚を寄せます。まとめ買いしておくべき安価な最強ワームです。)
6. 手軽で最強。夜におすすめのターゲットと「待ち」の釣り
ルアーフィッシングも面白いですが、夜釣りで圧倒的な釣果を出しやすく、初心者にも強くおすすめしたいのが「エサを使ったぶっこみ釣り」です。
対象魚はウナギ、アナゴ、クロダイ、スズキなど。 仕掛けは非常にシンプルで、オモリと針だけの仕掛けに、青イソメやサンマの切り身を付けて海底に沈め、あとは待つだけ。 彼らは夜になると海底の匂いを嗅ぎつけて活発に動き回るため、匂いの強いエサは夜釣りの最強の武器になります。
竿の先に「ルミカ ケミホタル(穂先用)」や鈴をつけておけば、暗闇に光るケミホタルが「フワッ…フワッ…」と沈み込んだり、鈴が「リンリン!」と鳴り響いたりする、夜釣りならではの極上の興奮を味わうことができます。
7. 命と釣果を守る、夜釣り必須の厳選ギアとマナー
夜釣りは危険と隣り合わせです。視界が悪い中での落水は命に関わりますし、見えない毒魚(ゴンズイやハオコゼ、エイなど)を素手で触ってしまう危険性も高まります。安全装備だけは絶対に妥協しないでください。
【絶対必須:ライフジャケット(桜マーク付き)】
これがないと夜釣りはしてはいけません。動きやすい自動膨張式がおすすめです。
「ダイワ DF-2222 (インフレータブルライフジャケット ウエストタイプ)」 (国土交通省型式承認品のAタイプ。最新モデルで非常にコンパクトかつ軽量です。命を守る投資として、信頼できるメーカーのものを必ず着用してください。)
【ヘッドライトの科学:水面を照らすのは絶対NG!】
ヘッドライトは必須ですが、「絶対に水面を照らさない」でください。 以前、私が真っ暗な堤防で釣りをしていた時、後から来た釣り人が誤って水面を強力なライトで照らしてしまい、足元の明暗に潜んでいた数匹のシーバスが一瞬で沖へ逃げ去っていくのを見たことがあります。魚は急な強い光を極端に警戒します。 ルアー交換などの際は、海に背を向けるか、魚が警戒しにくい「赤色LED」を使うのがマナーであり、釣果を落とさない科学的なコツです。
「ハピソン(Hapyson) チェストライト インティレイ YF-200B」 (首から下げるタイプなので両手が空き、仕掛け作りが格段に楽になります。魚を散らしにくい微弱な光や、赤色LEDモードも搭載されているナイトゲームのド定番アイテムです。)
さらに、グロー(蓄光)ルアーを使うなら、専用のUVライトがあると便利です。
「ハピソン(Hapyson) 蓄光ジグホルダー YF-970JH」 (ルアーを数秒差し込むだけで強烈に発光させることができます。夜のルアーローテーションの手返しが劇的に上がりますよ。)
まとめ:夜のフィールドは、知識で照らせ!
いかがでしたか? 「夜は釣れる」というジンクスの裏には、プランクトンの浮上、側線と嗅覚の活用、光と影のコントラストといった、非常に明確な科学的理由が存在しています。
- 夜はエサが浅場に集まり、魚の警戒心が解けるゴールデンタイム。
- 視覚だけでなく、波動(側線)と匂い(嗅覚)でアピールする。
- 月明かりの有無でポイント(広範囲か、常夜灯下か)を変える。
- ルアーは「黒」や「グロー」を使い、超スローに引く。
- ライフジャケットと赤色LEDライトは絶対に忘れない。
この知識を頭に入れた上で夜の海や川に立つと、見えない水中の様子がまるで手に取るように想像できるようになるはずです。暗闇はもう怖いものではなく、あなたに大物を届けてくれる最高の味方になります。




