
みなさん、こんにちは!
3月。釣り人にとって長く厳しい冬が終わり、ついに伝説が始まる季節がやってきました。
海の中では「乗っ込み(のっこみ)」という一大イベントが幕を開けます。その主役こそ、我らが「チヌ(クロダイ)」です。
普段は警戒心が強くなかなか口を使わない賢いチヌが、産卵のために浅場へ押し寄せ、なりふり構わずエサを食い漁る……それが3月の乗っ込みチヌです。
この時期は50cmを超える「年無し(としなし)」と呼ばれるモンスターサイズに出会える確率が年間で最も高い、まさに夢のシーズン。
今回はこの「乗っ込みチヌ」について、生態学的な根拠からルアー釣り(チニング)、伝統のフカセ釣り、そして釣った後のおすすめレシピまで解説します。
1. そもそも「乗っ込み」とは何か?3月のチヌが熱い理由
「乗っ込み」という言葉、よく聞きますが、具体的に魚がどういう状態かご存知でしょうか? 単に「産卵期」というだけではありません。釣り人にとって重要なのは、「産卵前の荒食い」という行動パターンです。
水温12℃の攻防戦
チヌは変温動物です。冬の間、水温の安定した深場(落ちチヌ)でじっとしていた彼らは、春の日差しで浅場の水温が上昇し始めると、産卵場所となる藻場や河口付近を目指して移動を開始します。
この移動の目安となるのが海水温12℃〜13℃のライン。3月はこの水温域に突入するタイミングであり、チヌは産卵という大仕事のために莫大なエネルギーを必要とします。
「警戒心」より「食欲」が勝る瞬間
普段のチヌは非常に神経質で、人影を見ただけで散ります。しかし、3月の乗っ込み個体は違います。お腹に卵や白子を抱え、エネルギー枯渇状態にあるため、「多少のリスクを負ってでもエサを食う」というモードに入っています。
これが、初心者が堤防から50cmオーバーを釣ることができる最大の理由です。
「走り」と「盛り」を見極める
- 3月上旬(走り): オスが先に浅場に入って縄張りを作ります。数は出ますがサイズは中型が多い。
- 3月下旬〜4月(盛り): 遅れて大型のメスが入ってきます。ここが「年無し」狙いのピーク。お腹がパンパンに膨れた個体(腹パン)が狙えます。
2. 乗っ込みチヌは「どこ」にいる?ポイント選定のコツ
海は広いです。闇雲に投げても釣れません。乗っ込みチヌのルートを読み解きましょう。
① 藻場(海藻帯)は産卵のベッド
チヌはホンダワラなどの海藻に卵を産み付けたり、稚魚の隠れ家としたりします。
3月、海面まで海藻が伸びているエリアがあれば、その周辺はチヌのストック量が半端ではありません。藻の「中」ではなく、藻の「切れ目」や「際」が狙い目です。
② 河口域(汽水域)と温排水
チヌは塩分濃度の変化に強く、汽水域を好みます。特に春先は、雪解け水が入ると水温が下がりますが、晴れた日の満ち潮に乗って、温かい海水が川に差し込むタイミングは激アツです。
また、工場からの温排水周りは、冬から居着いている個体と、乗っ込みの個体が混在する一級ポイントです。
③ 濁りは「最強の味方」
「春濁り」という言葉があります。プランクトンの増殖や、春の嵐による底荒れで海が濁ることです。
チヌは濁りを愛します。濁りが入ると警戒心がさらに薄れ、岸壁の真下まで寄ってきます。「海がカフェオレ色になったらチャンス」と覚えておいてください。
3. 【実釣編】ゲーム性抜群!チニング(ルアー)攻略
近年流行しているのがルアーでチヌを狙う「チニング」。特にトレンドとなっているのは、ワームを使った「フリーリグ」スタイルです。
なぜ3月は「フリーリグ」なのか?
フリーリグとは、ラインにシンカー(重り)を通し、その下にフックとワームを結ぶだけの仕掛け。シンカーが固定されていないため、キャスト後にシンカーが先に底に着き、ワームが後から「ふわっ」とノーシンカー状態で漂いながら落ちていきます。
3月のチヌは食欲があるとはいえ、水温はまだ低め。動きの速いルアーには追いつけません。この「ふわっ」とした食わせの間(ま)を作れるフリーリグこそ、乗っ込みチヌ攻略の最適解なのです。
チニングのおすすめタックル
チヌの口は非常に硬く、強烈なフッキングパワーが必要です。
- ロッド: 7フィート台のL〜MLクラス。専用ロッドがベストですが、強めのメバリングロッドやバスタックルでも代用可。
- リール: 2500番〜3000番のスピニング、またはベイトフィネスリール。
- ライン: PEライン0.6号〜0.8号 + リーダーフロロ2.5号〜3号。
※リールの番手選び、特に「C」や「HG」の意味を理解しておくと、チニングに最適な一台が見つかります!
■ おすすめ商品(チニング編)
【ロッド】シマノ ブレニアス BB エントリーモデルながら、チヌ専用設計の感度とパワーは本物。ボトム(底)の形状を把握しやすく、根掛かりを回避できます。
【リール】ダイワ 23 レガリス LT2500S-XH コスパ最強のリール。軽さと剛性のバランスが良く、チニングの激しいジャークにも耐えられます。
【ワーム】ケイテック クレイジーフラッパー 2.8インチ チニング界の絶対的エース。アームが水を強烈に撹拌し、濁りの中でもチヌに気づかせます。「グリパン」や「エビミソ」カラーが鉄板。
【ルアー】ジャクソン ちぬコロリ ワームが面倒な方はこれ。投げてゆっくり巻くだけで、起き上がりこぼしのように底を這い、カニやエビを演出します。根掛かり回避能力が異常に高いです。
アクションのコツ:ズル引き&ステイ
基本はボトム(底)まで沈めて、底を感じながらゆっくり巻く「ズル引き」。 何かに当たったら、巻くのを止めて3秒〜5秒「ステイ(放置)」してください。乗っ込みチヌはこの止まっている瞬間に「ガツガツッ!」と食ってきます。早合わせは厳禁。重みが乗るまで待ちましょう。
4. 【実釣編】王道の伝統釣法「フカセ釣り」攻略
「ウキが海中に消し込む瞬間が見たい!」という方は、コマセ(撒き餌)を使うフカセ釣りが一番です。大型の実績はやはりこの釣りがナンバーワン。
3月のコマセ配合の極意
乗っ込み期は、チヌを底に留めておく必要があります。比重の重い集魚剤を選びましょう。
- オキアミ: 3kg(1枚)
- 集魚剤: チヌパワー等の比重が高いもの + 押し麦やコーンが入っているもの。
- 刺し餌: オキアミだけでなく、「練りエサ(ダンゴ)」と「コーン」を必ず持参してください。春はエサ取り(フグなど)も動き出すため、オキアミだけでは瞬殺されることがあります。
狙うは「底スレスレ」より「這わせ」
冬〜春のチヌは底のエサを拾っています。ウキ下のタナ設定は、水深よりさらに30cm〜50cm深く取り、エサが底を這うように調整(ハワセ釣り)するのがセオリーです。
■ おすすめ商品(フカセ釣り編)
【リール】シマノ 22 BB-X リンカイ SP もし予算が許すなら、チヌ専用のレバーブレーキリールを。チヌが突っ込んだ瞬間にレバーで糸を出し、竿の弾力を保ったままやり取りができます。
【針】がまかつ チヌR チヌの硬い唇を貫通する刺さりの良さと、強靭な強度。3月の大型狙いには3号〜4号を選んでください。
5. 乗っ込みチヌは美味しい?食べるための極意
「チヌは臭いから食べない」という人がいますが、それは大間違いです。 確かに夏場の湾奥のチヌは臭みがあることがありますが、3月の乗っ込みチヌ、特に外洋に面したエリアや潮通しの良い場所で釣れた個体は、「桜鯛」に匹敵するほどの美味です。
脂の乗りが別格
産卵前で栄養を蓄えているため、包丁を入れると脂でベトベトになるほど。身は白く透き通り、甘みが強いのが特徴です。
必須:血抜きと神経締め
チヌを美味しく食べる条件は、釣った直後の処理にかかっています。 居着きの個体は若干の磯臭さを持つことがありますが、しっかりと血を抜き、冷やし込むことで臭みは消え、旨味だけが残ります。
おすすめレシピ
- お刺身(皮霜造り): チヌは皮と身の間に旨味があります。皮を引かず、バーナーや熱湯で皮目を炙って(湯引きして)氷水で冷やす「皮霜造り」が絶品です。
- カルパッチョ: 薄切りにしたチヌに、オリーブオイル、塩、レモン、ブラックペッパーをかけるだけ。白ワイン泥棒です。
- 鯛めしならぬ「チヌめし」: 焼いたチヌをご飯と一緒に炊き込みます。真鯛よりも出汁が濃く、野性味あふれる旨味が楽しめます。
まとめ:3月の海で「年無し」の夢を掴もう!
3月の乗っ込みチヌは、一年の中で最もエキサイティングで、最も大型に近づけるチャンスです。 ルアーで攻めるもよし、ウキ釣りで風流に待つもよし。
科学的な根拠(水温12℃、濁り、産卵行動)に基づき、正しいポイントと仕掛けを選べば、「幻」と言われる年無しチヌは、決して幻ではありません。
さあ、タックルの準備はできましたか? 今週末は、濁りの入った河口や、藻場の広がる堤防へ出かけてみてください。 海の中では、腹を空かせたモンスターたちが、あなたのルアーやエサを待っています。








