
みなさん、こんにちは!
「バシュッ!!……ジリジリジリ……」
キャストした直後、手元から聞こえる絶望のサウンド。スプール(糸を巻く筒状のパーツ)を見てみると、そこには鳥の巣のようにグシャグシャに絡み合ったライン(糸)が……。 ベイトリールを使うすべてのアングラーが必ず通る道、それが「バックラッシュ」です。
私自身、ベイトリールを始めたばかりの頃、琵琶湖のオカッパリで迎えた最高の朝マズメに大バックラッシュをやらかし、魚がボイル(小魚を追い詰めて水面が跳ねる現象)しているのを横目に、泣きそうになりながら30分以上も糸と格闘した苦い経験があります。あの時の焦りと悔しさは今でも忘れません。
1. なぜ「バックラッシュ」は起こるのか?
直し方を知る前に、まずは「なぜ糸が爆発するのか」というメカニズムを簡単に理解しておきましょう。ここが分かると、予防策がスッと頭に入ってきます。
バックラッシュが起こる理由は、極めてシンプルです。 「ルアーが飛んでいくスピード」よりも、「スプールが回転して糸を出すスピード」が上回ってしまった時に起こります。
ルアーは前に飛んで引っ張ろうとしているのに、スプールはそれ以上の猛スピードで糸を放出しようとする。行き場を失った糸はスプールの中で浮き上がり、逆回転して巻き込まれ、結果的にグシャグシャに絡まってしまうのです。
具体的に、ルアーが失速する(スピードが落ちる)主な原因は以下の3つです。
- 空気抵抗: スピナーベイトやジョイントルアーなど、空気抵抗が大きいルアーは途中で急ブレーキがかかります。
- 風の影響: 向かい風や横風を受けると、ルアーは一気に失速します。
- キャストの力み: 「遠くまで飛ばしたい!」と力んで手首を強く返しすぎると、ルアーの初速だけが無駄に上がり、後半で急激に失速します。
この「ルアーの失速」に合わせて、スプールの回転を適切に抑えてあげること。これがバックラッシュを防ぐ最大の鍵になります。
2. バックラッシュした時に「やってはいけない」3つの行動
実際にバックラッシュしてしまった時、焦ってやりがちなNG行動があります。これをやると、簡単に直せたはずのものが「ハサミで切るしかない再起不能状態」に悪化します。
- NG行動①:浮いたラインを力任せに引っ張り出す 絶対にやってはいけません。浮いたラインの下には、必ず「V字型に食い込んでいる結び目」が隠れています。無理に引っ張ると、この結び目がギュッと固く締まり、二度と解けなくなってしまいます。
- NG行動②:スプールを爪でカリカリとほじくる 固まったラインを爪や先の尖ったものでほじくり出そうとすると、ライン自体に深い傷が入ります。運良く直せたとしても、次に魚が掛かった瞬間にそこからプツンと切れてしまいます。
- NG行動③:イライラしてリールを振る 気持ちは痛いほど分かりますが(笑)、全く意味がありませんし、ロッドやリールを破損する原因になります。まずは深呼吸して、次のステップに進みましょう。
3. 魔法の裏技!バックラッシュを「10秒」で直す手順
お待たせしました。最短でバックラッシュを直す「親指プレス」という裏技の手順です。
手順①:クラッチを切り、ラインを優しく引き出す
まずはクラッチを切り(ボタンを押してスプールをフリーにする)、ロッドの先端側のラインを優しく、ゆっくりと引っ張ります。 スルスルと出ていればそのまま引き出し続け、「ガッ」と何かに引っかかって止まったら、そこで引くのをやめます。ここが「食い込んでいるポイント」です。
手順②:クラッチを戻す(カチッとオンにする)
ラインが止まったら、必ずハンドルを回してクラッチを「オン(巻ける状態)」に戻してください。
手順③:親指の腹でスプール全体を強く押さえつける
バックラッシュして浮き上がっているラインの上から、親指の腹を使って、スプール全体を「ギュッ!!」と強く押し付けます。 かなり強めに押さえて大丈夫です。
手順④:親指で押さえたまま、ハンドルを「巻く」
え?直すのに巻くの?と驚くかもしれません。これが魔法の正体です。 親指でスプールを強く押さえつけたまま、ハンドルを「半回転〜1回転」ほど回してラインを巻き取ります。 ※この時「ゴリゴリッ」という嫌な感触がありますが、恐れずに強引に巻いてください。親指の摩擦を利用して、下の層に食い込んでいたライン(結び目)を上に引っ張り出す(浮き上がらせる)作業をしています。
手順⑤:再びクラッチを切り、ラインを引き出す
ハンドルを巻いたら、もう一度クラッチを切り、ラインを優しく引き出してみてください。 あら不思議!さっきまでガッチリ食い込んでいた結び目がポロッと外れ、スルスルとラインが出てくるはずです。
手順⑥:直るまで「手順②〜⑤」を繰り返す
もしまた別の箇所で引っかかったら、無理に引かず、再度「クラッチを戻す → 親指で強く押さえる → ハンドルを巻く → クラッチを切って引く」を繰り返します。 軽度〜中度のバックラッシュなら、これを2〜3回繰り返すだけで、あっという間に元の状態に戻ります!
4. 重症度別!「切るべきか、直すべきか」の判断基準
魔法の裏技を使っても、スプールの奥深くまで複雑に絡み合ってしまった「重症」の場合は、潔い決断が必要です。釣りの貴重な時間を無駄にしないための判断基準をお伝えします。
- 軽度(表面だけフワフワ浮いている): 親指プレスですぐに直ります。所要時間10秒〜30秒。
- 中度(数カ所食い込んでいるが、スプールの地肌は見えない): 親指プレスを数回繰り返せば直せます。所要時間1分〜3分。
- 重症(スプールの奥の地肌が見えるほど深く食い込み、固結びになっている): 【決断】ラインカッターで切りましょう。 5分以上格闘しても解けない場合は、思い切って絡んでいる部分をハサミで切り捨ててください。もったいないと思うかもしれませんが、無理に解いて「キンク(ラインがカクッと折れ曲がり、白く白濁して強度が激減した状態)」したラインを使い続けると、ルアーだけが飛んでいってしまったり(高切れ)、せっかくのランカーバスをバラす原因になります。
おすすめアイテム(必須装備)
ダイワ(DAIWA) プチリガー PS
ピンオンリール(伸びる紐)につけて胸元やバッグに常備しておきたい、超コンパクトなラインカッター。ナイロンやフロロはもちろん、PEラインもスパスパ切れる切れ味の良さが魅力です。いざという時の手術(ラインカット)に必須です。
5. バックラッシュを未然に防ぐ「5つの予防策」
直し方をマスターしたら、次は「そもそもバックラッシュさせない」ための完璧な設定と技術を身につけましょう。
予防策①:ブレーキは「最新の正しい設定」にする
一昔前は「メカニカルブレーキ(スプール横の丸いツマミ)を締めて、ルアーがゆっくり落ちるようにする」と教えられていましたが、近年のリールでは、その常識は変わってきています。
現在主流のダイワの「ゼロアジャスター」や、シマノの「SVS / DC」など、スプールが高精度化されたリールにおいて、メカニカルブレーキを締めすぎると、スプールの回転性能を殺すだけでなく、軸受けベアリングの寿命を縮めてしまいます。
【現在の正しいブレーキ設定手順】
- メカニカルブレーキは「ゼロ設定」: スプールを指で左右に動かしてみて、「カタカタ」というガタつきがギリギリ無くなるポイント(ゼロ設定)に合わせます。これ以降、メカニカルは基本いじりません。
- 外部ダイヤル(マグネット/遠心)を「強め(MAXの8割程度)」に設定する:
- 実際に軽くキャストし、少しずつ外部ダイヤルの数値を下げていきます。
- 「飛距離が出て、着水時に少しラインがフワッとするけど絡まない」というギリギリの数値を自分のベストポジションとします。
予防策②:ベイトリールの魂「サミング」を覚える
機械のブレーキだけに頼らず、自分の指でスプールの回転を制御する技術が「サミング」です。これを覚えると、トラブルは激減し、キャストの精度も格段に上がります。
- やり方: ルアーが飛んでいる最中や、着水する直前に、親指の腹(または親指の少し横の柔らかい部分)で、回転しているスプールのエッジ(端の角)に軽く触れます。
- ポイント: ギュッと押さえつけるのではなく、「フェザータッチ(羽が触れるくらい軽く)」でチリチリと摩擦をかけるイメージです。ルアーが着水する瞬間に、スプールの回転を完全に指で止めるのが最終目標です。
予防策③:ラインの巻きすぎに注意(スプールエッジの1〜2mm下まで)
「たくさん巻いた方が安心!」と、スプールパンパンにラインを巻いていませんか? ラインを巻きすぎると、スプール自体が重くなりすぎて回転が暴走しやすくなります。また、浮き上がったラインがリールのフレームに干渉しやすくなります。 ラインの適正量は、スプールエッジ(ふち)から「1mm〜2mm」ほど下のライン(八分目程度)にとどめておくのがベストです。
予防策④:空気抵抗が少なく、重さのあるルアーで練習する
初心者のうちは、スピナーベイトや軽いミノーなど「空気抵抗が大きく失速しやすいルアー」は鬼門です。まずは、ある程度重さ(10g〜14g程度)があり、空気抵抗が少なくてカッ飛んでいくルアーでキャストの感覚を掴みましょう。
おすすめ練習ルアー
JACKALL(ジャッカル) TN60
バイブレーションプラグのド定番。リップがないため空気抵抗が極めて少なく、向かい風でも弾丸のように一直線に飛んでいきます。ベイトリールで「気持ちよく飛ばす感覚」を養うには最高のルアーです。巻くだけでよく釣れるのも嬉しいポイント。
予防策⑤:キャストフォームを見直す(手首を返しすぎない)
スピニングリールのように「ビュッ!」と手首を強く返して、ルアーの初速だけで飛ばそうとすると、100%バックラッシュします。 ベイトリールのキャストは、「ロッド(竿)のしなり(反発力)」にルアーの重さを乗せて、押し出すように「フワッ」と投げるのが正解です。力みは禁物。リラックスして、ロッドの曲がりを感じながらキャストする練習をしましょう。
6. 道具の力で解決!トラブル激減のおすすめ神アイテム
最後に、「技術だけでなく、道具の力でバックラッシュを防ぐ」ための、神アイテムを2つ紹介します。
神アイテム①:ラインの滑りを劇的に良くする「魔法のスプレー」
VARIVAS(バリバス) PEにシュッ! プロ仕様
これは本当に凄いです。「PEに〜」という名前ですが、ナイロンやフロロカーボンラインにも効果絶大です。 釣行の前日に、スプールに巻かれたライン全体にシューッと吹きかけておくだけ。ラインの表面がフッ素の膜でコーティングされ、摩擦抵抗が激減します。ライン同士のくっつき(ベタつき)が無くなるため、キャスト時のラインの放出が驚くほどスムーズになり、バックラッシュのリスクが大幅に下がります。通常版もありますが、滑りの良さが段違いな「プロ仕様」を強くおすすめします。
神アイテム②:しなやかで扱いやすい「初心者の味方ライン」
サンヨーナイロン アプロード GT-R ウルトラ
ラインには硬いもの(フロロなど)と柔らかいもの(ナイロンなど)があります。硬いラインは巻き癖がつきやすく、スプールの中でスプリングのようにバネってしまい、バックラッシュの大きな原因になります。 ベイトリールに慣れるまでは、この「GT-R ウルトラ」のような、しなやかで癖がつきにくいナイロンラインを使ってください。耐摩耗性(擦れに対する強さ)も異常に高く、多少バックラッシュしてラインが折れ曲がっても、そう簡単には切れません。初心者の練習用として、これ以上のラインはありません。
まとめ:恐れずに投げ続けよう!
いかがでしたでしょうか。 バックラッシュの直し方から、根本的な予防策まで、考えられる全ての情報を詰め込みました。
- バックラッシュしたら、焦らず「親指プレス」で強引に巻いて引き出す。
- 重症で解けない時は、思い切ってラインカッターで切る勇気を持つ。
- ブレーキは「ゼロ設定+外部ダイヤル強め」からスタート。
- サミングを覚え、適切なルアーとラインを選ぶ。
バックラッシュは、何十年釣りをしてるプロのアングラーでも、強風が吹けば必ずやらかします。恥ずかしいことでも、あなたが下手なわけでもありません。
直し方さえ知っていれば、恐れることは何もありません。 しっかりブレーキを設定して、ラインコーティング剤でバッチリ準備をしたら、あとは水辺に立ってガンガン投げるだけです! 失敗を恐れずにキャストを繰り返すことで、あなたの親指は自然と「サミングの感覚」を覚え、気づけばバックラッシュとは無縁のアングラーに成長しているはずです。



