温排水に魚が集まるのは「代謝」のせい?冬の魚の生存戦略を科学する

温排水に魚が集まるのは「代謝」のせい?冬の魚の生存戦略を科学する

みなさん、こんにちは!

寒いですね!正直、まだまだこたつで丸まっていたいです。でも、釣り人としての本能が「現場に行け」と囁くんですよね(笑)。

さて、冬の釣りにおいて「最強のポイント」といえばどこを思い浮かべますか? 深場(ディープ)?テトラの穴? もちろんそれらも正解ですが、圧倒的な爆発力を持っているのが「温排水(おんはいすい)」エリアです。

工場や処理場、あるいは生活排水などが流れ込む、周囲より水温が高い場所。ここには冬でも信じられないほど魚が密集していることがあります。

「温かいから魚が集まる」。 これは直感的にわかりますよね。でも、「なぜ温かいと魚が集まるのか?」、その本当の理由を科学的に説明できますか?

「寒いから暖を取りに来ている」……実は、それだけではないんです。 そこには、魚という生物の「代謝」「酵素の働き」、そして生き残るための壮絶な「エネルギー収支の計算」が隠されています。

今回は、この「温排水」をテーマに、魚の生理学という科学的な側面から徹底的に切り込みます。これを読めば、なぜ冬の温排水でルアーへの反応が変わるのか、なぜあのタイミングで食うのかが、手に取るように分かるようになりますよ!

温かいコーヒーでも飲みながらじっくり読んでくださいね。


1. 魚は「変温動物」。水温=生命活動そのもの

まず、基本中の基本ですが、人間と魚の決定的な違いからお話ししましょう。 私たちは「恒温動物」です。外気温が0度だろうが30度だろうが、体温はおよそ36度付近に保たれています。だから、寒くても身体を動かせますよね。

しかし、魚は「変温動物」です。 水温が10度なら、彼らの体温もほぼ10度。水温が5度なら、体温も5度になります。 つまり、「水温=彼らのエンジンの温度」そのものなのです。

車のエンジンを想像してください。極寒の朝、エンジンが冷え切っているとオイルが硬くなり、ピストンの動きが鈍くなりますよね? 冬の魚はまさにあの状態。血液の粘度が上がり、筋肉の収縮速度が物理的に低下します。 「やる気がない」のではなく、「物理的に身体が動かない」のです。

ここに「温排水」という熱源が登場するとどうなるか。 周囲が水温5度の世界で、そこだけ15度あったとしましょう。 これは人間で言えば、真冬の吹雪の中から、いきなり春の陽気の中に飛び込むようなもの。エンジンの回転数が劇的に上がり、身体が動くようになるのです。

2. 重要なのは「酵素」!代謝と水温の科学的関係

ここから少し科学的に掘り下げます。 なぜ水温が下がると動けなくなるのか? その鍵を握っているのが、体内で働く「酵素(こうそ)」です。

食べたものを消化吸収するのも、筋肉を動かすエネルギー(ATP)を作るのも、すべて体内の化学反応によるもので、それを助けているのが酵素です。 実は、この酵素には「働くのに最適な温度(至適温度)」があります。

多くの魚(特に温帯性のバスやコイ、シーバスなど)の酵素は、水温が低いと極端に活性が下がります。 酵素が働かないとどうなるか?

  1. 消化ができない:食べたエサが胃の中でいつまでも残る。消化不良を起こす。
  2. エネルギーが作れない:瞬発力が出せない。
  3. 免疫が落ちる:病気になりやすくなる。

冬のバスがエサを食わないのは、「お腹が空いていない」というより、「今食べると、消化できずに死ぬリスクがあるから食べられない」という方が生物学的には正しい表現かもしれません。

温排水エリアにいる魚は、この「酵素の足かせ」から解放されています。 水温が高いおかげで酵素が活発に働き、「食べて、消化して、エネルギーに変える」というサイクルを回せるのです。だから、他のエリアの魚がじっとしている間も、温排水の魚はルアーを追えるのです。

3. 「Q10の法則」を知れば、魚の動きが見えてくる

ここで一つ、覚えておくと釣りが上手くなる科学用語を紹介します。 「Q10(キュー・テン)温度係数」という言葉をご存知ですか?

これは化学反応の速度が、温度が10度上がったときに何倍になるかを示す指標です。 一般的に、生体内の化学反応(代謝)のQ10は「2〜3」と言われています。

これはどういうことかと言うと、「水温が10度上がれば、魚の代謝スピード(生きるスピード)は2倍から3倍になる」ということです。

逆に言えば、水温が20度から10度に下がると、代謝は半分以下に落ちます。 5度まで下がれば、さらにその半分……。 こうなると、魚にとって「ルアーを1メートル追いかける」という行為のエネルギーコストが、夏場とは比較にならないほど重たい負担になるのです。

しかし、温排水エリアだけは別世界。 真冬の低水温期、本流が6度でも温排水周りが14度あれば、そこにいる魚は本流の魚に比べて数倍の代謝速度を持っています。 これが、温排水で「リアクションの釣り」や「速い動き」が成立する科学的根拠です。

4. 温排水は「コタツ」ではなく「食堂」である理由

「温かいから、暖まりに来ている」 これは半分正解ですが、半分間違いです。

自然界は厳しい世界です。ただ暖を取るためだけにエネルギーを使って移動するほど甘くありません。 温排水に魚が集まる最大の理由、それは「食物連鎖の加速」です。

  1. 植物プランクトンの増殖:水温が高いと、冬でも植物プランクトンが光合成を行い増殖します。
  2. 動物プランクトンの活性化:それを食べるミジンコやヨコエビなどの動物プランクトンが集まり、爆発的に増えます。
  3. ベイトフィッシュの招集:プランクトンを求めて、オイカワ、ボラ(イナッコ)、タナゴなどの小魚が集まります。
  4. フィッシュイーターの到来:そして、その小魚を狙ってバスやシーバス、ナマズが集結します。

つまり、温排水エリアは冬の間に店じまいしている他のエリアとは違い、ここだけ24時間営業の「大繁盛食堂」状態になっているのです。 魚たちは暖を取りに来ているだけでなく、「冬の間でも唯一、効率的に食事ができる場所」だからこそ、そこに執着するのです。

私自身、真冬の工場排水エリアで釣りをした時、湯気が立つ水面に無数のボラの子が群がり、それを狙ってボイルするシーバスを見たことがあります。外気温は氷点下なのに、水中だけは「秋のハイシーズン」のような熱気でした。あの光景は、まさに生態系の縮図です。

5. 科学的アプローチによる実釣攻略(バス・ソルト)

では、この知識をどう釣果に結びつけるか。 「温かい場所に投げれば釣れる」ほど単純ではありません。

【バス釣り編:代謝レベルを見極める】

温排水の中にいるバスにも、2種類のタイプがいます。

  • タイプA:高活性フィーディング組
    • 流れの芯や、排水が直撃するヨレに陣取っている個体。彼らは代謝がMAX状態で、エサを食いたくて仕方ありません。
    • 攻略法:強気のルアーセレクト。シャッドの早巻きや、スピナーベイトのスローロールが効きます。
  • タイプB:省エネ待機組
    • 温排水の影響はあるけれど、少し離れた淀みやカバーにいる個体。彼らは「体温は維持したいけど、無駄な体力は使いたくない」状態。
    • 攻略法:ここでは「移動距離を抑えた」アプローチが必要です。

【おすすめアイテム】 この「高活性」と「低活性」の両方を一つのルアーで探るなら、やはりシャッドが最強です。

  • ジャッカル ソウルシャッド 58SP
    • 冬のド定番。高速巻きでリアクションも狙えるし、止めて食わせることもできる傑作です

もっとスローに見せたい場合は、高比重ワームのノーシンカーが効きます。

  • O.S.P ドライブスティック 3.5インチ
    • フォール時の自発的なアクションは、低水温期のバスにも口を使わせます

【海釣り・淡水釣り編:塩分濃度と比重の変化】

海の場合、温排水(特に工場や発電所)は真水に近いことが多いです。 海水温より温排水の方が高く、かつ塩分濃度が低い(真水は海水より軽い)ため、温排水は「表層」に浮きます。

底の方の水は冷たい海水、表層は温かい真水混じりの水。この「層」を意識することが重要です。 シーバス(スズキ)やクロダイ(チヌ)を狙う場合、表層の温かい水を意識している活性の高い魚にはフローティングミノー、冷たい層との境目(サーモクライン)に潜む魚にはバイブレーションやシンキングペンシルを通すのがセオリーです。

6. 狙うべきは「酸素」との交差点

ここが今回一番伝えたい「キモ」です。 「水温が上がると、水に溶ける酸素の量(溶存酸素量)は減る」という化学の法則があります。

コーラを温めると炭酸(二酸化炭素)がすぐに抜けますよね?あれと同じで、気体は温度が高い液体には溶けにくいのです。

温排水の出口直下は、水温は高いですが、実は酸欠状態になりやすい場所でもあります。 魚にとって「温かいけど息苦しい」場所は、長居できません。

では、どこが特等席か? それは、「温排水が流れ込み、冷たい水(酸素を多く含む水)と混ざり合い、かつ適度な水流で空気が巻き込まれる場所」です。

  1. 排水口から少し離れた、流れがヨレている場所。
  2. 温排水が何かに当たって白泡が立っている少し下流。

ここには、「適度な水温」と「十分な酸素」、そして流されてくる「エサ」の3つが揃います。 ただ排水口に投げるのではなく、この「酸素との交差点」を意識してキャストコースを変えてみてください。釣果が劇的に変わります。

7. おすすめタックルとルアー選択

温排水エリアは魚の引きも強くなります。冬だからといって弱気なタックルだと、思わぬ大物に切られることもあります。

【リール】 ドラグ性能と巻き心地の良さは必須です。

  • シマノ 23 ストラディック C2500S / 2500SHG
    • この価格帯でこの性能は反則級です。耐久性も高く、冬のデカバスやシーバスにも余裕で対応できます。最新モデルは巻き出しも軽くなっていますよ!

【ロッド】 繊細なアタリを取りつつ、不意の大物にも耐えられるバットパワーが必要です。

  • ダイワ 月下美人シリーズ(メバル・アジングモデル)
    • 海釣り用ですが、淡水の小物釣りや冬のセコ釣りにも流用可能。感度が抜群に良いので、ショートバイトも逃しません

【おすすめルアー】 冬の温排水、特にシーバスやバスのマイクロベイトパターンにはこれが効きます。

  • ダイワ 月下美人 澪示威
    • 元々はメバル用ですが、温排水に溜まるハク(ボラの子)を偏食しているフィッシュイーターには劇的に効きます。安価で手に入りやすいのも魅力!

まとめ:知識を武器に、冬のフィールドへ!

いかがでしたか? 「温かいから釣れる」の裏側には、これだけの科学的な理由が隠されていました。

  1. 魚は変温動物であり、水温がエンジンの出力を決める。
  2. 酵素の働きが活発になることで、捕食・消化が可能になる。
  3. 温排水はプランクトンから始まる「食物連鎖の食堂」である。
  4. ただし酸欠に注意し、「酸素」と「水温」がクロスする場所を狙う。

この理屈が分かっていれば、釣り場に着いてからの「立ち位置」や「ルアーを通すコース」が変わってくるはずです。 闇雲に投げるのではなく、「今、自分のルアーは酸素と温度のブレンドゾーンを通っているか?」と想像しながら巻いてみてください。その一投に、冬のメモリアルフィッシュが待っているかもしれません。

さあ、理屈は分かりましたね? 次は実践です!防寒対策を万全にして、近くの温排水ポイント(もちろん立ち入り禁止区域でないか確認してくださいね!)へ調査に行ってみましょう!

もし「こんな場所で釣れたよ!」という報告があれば、ぜひコメント欄で教えてください。 それでは、良い釣りを!

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