
みなさん、こんにちは!
今回は「巻きの釣り」の主役である「クランクベイト」について深掘りしていきます。
丸っこい愛らしいボディに、大きなリップ(口元の透明な板)。ルアーフィッシングと聞いて、誰もが真っ先に思い浮かべるあの形です。 しかし、「ただ投げて巻くだけでしょ?」「ブルブル震えてるだけで、なかなか釣れないんだよね…」と思っている方も多いのではないでしょうか。
クランクベイトは「障害物(カバー)を攻め抜くための、最も攻撃的なルアー」です。 ただ中層を無防備に泳がせるルアーではありません。リップの形状や潜行深度を正しく理解し、水中の見えない岩や木に「あえてぶつけていく」ことで、スレたバスに強制的に口を使わせるリアクションベイト(反射食い誘発ルアー)なのです。
1. クランクベイトの真の力とは?「カバー回避」と「リアクション」
なぜクランクベイトは釣れるのか。それは、他のルアーにはない圧倒的な「障害物(カバー)回避能力」を持っているからです。
クランクベイトを巻くと、リップが水の抵抗を受けて「前傾姿勢(頭下がり)」で潜っていきます。この時、リップがバンパー(盾)の役割を果たし、水中の岩や木といった障害物に真っ先に当たります。 リップが障害物に当たると、ルアーは「ヒラッ」と軌道を逸らし、障害物を乗り越えます。フック(針)はルアーのボディとリップの裏側に隠れる形になるため、驚くほど根掛かりしません。
そして、この「障害物に当たって、バランスを崩して軌道が変わった瞬間(ヒラを打った瞬間)」に、バスの本能にスイッチが入り、思わずバイト(噛み付く)してしまうのです。これがリアクションバイトです。 「ただ巻き」で釣れない人は、この「何かに当てる」という意識が欠けていることがほとんどです。
2. 絶対基準!「潜行深度(レンジ)」による3つの使い分け
クランクベイトを選ぶ上で最も重要なのが、「ルアーが最大何メートルまで潜るか」という潜行深度(レンジ)です。 バスがいる水深、あるいは障害物がある水深に、ルアーの潜る深さを合わせないと、クランクベイトの力は半分も発揮されません。大きく分けて以下の3種類(+1種類)があります。
① SR(シャローランナー):水深0.5m 〜 1.5m
短いリップが特徴です。野池の岸際(シャロー)や、水面直下まで伸びたウィード(水草)の上、オカッパリ(岸釣り)で最も出番が多いモデルです。
【よくある疑問】「水深2mの場所でSRを投げて中層を引くのはアリ?」 → アリですが、効率は悪いです。クランクは「何かに当てる」のが基本なので、中層を引くならスピナーベイトやチャターベイトの方がバスを寄せる力があります。SRはあくまで「浅い場所の障害物を叩くため」に使いましょう。
② MR(ミディアムランナー):水深1.5m 〜 2.5m
やや長めのリップを持ちます。少し沖のブレイク(かけあがり)や、沈んだ倒木、護岸のえぐれなどを狙うのに最適です。オカッパリでは「自分が立っている足元の水深」に最も合いやすいため、SRと並んで出番が多いです。
③ DR(ディープランナー):水深3m 〜 5m以上
非常に長いリップを持つモデルです。ボートからの釣りがメインになりますが、オカッパリでも「急激に深くなる場所」や「足場が高い場所(足元まできっちり底を叩きたい時)」で活躍します。リップが長いため、実はカバー回避能力が最も高いのもDRの特徴です。
+α:マグナムクランク
近年定着した、全長10cm以上、重さ1.5oz〜2ozクラスの巨大クランク。強烈な水押しで、秋のターンオーバー時など、普通のルアーでは気付かれない状況で一発大物を引き寄せます。専用の強いタックルが必要ですが、野池でも実績は十分にあります。
3. アクションを決める「リップ形状」と「ボディ形状」
潜行深度の次に重要なのが、ルアーの形です。これによって「動きの質」と「得意な障害物」が変わります。
リップの形状:どこにぶつけるかで変える
- スクエアリップ(四角形): 動きが大きく(ウォブリング主体)、障害物に当たった時の「ヒラ打ち」が非常に大きいです。木、枝、レイダウン(倒木)、アシの茎など、硬くて縦に伸びる障害物を回避するのに最も適しています。
- ラウンドリップ(半円形): 動きはややタイト(ロール寄り)で、障害物を「舐めるように」スリ抜けます。ゴロタ石、リップラップ(石積み)、ウィード(水草)など、点で引っ掛かりやすい障害物を綺麗にかわすのが得意です。
- コフィンリップ(六角形/棺桶型): スクエアとラウンドの中間で、近年は採用モデルが減りましたが、非常にバランスが良く、どんな障害物にも対応できる万能型です。
ボディ形状:ファット vs フラットサイド
- ファットクランク(丸型): 一般的な丸っこいボディ。浮力が高く、動きがブリブリと強い(強い水押し)ため、濁った水(マッディウォーター)や、バスの活性が高い時期(夏〜秋)に広範囲を探るパイロットルアーとして最適です。
- フラットサイドクランク(平型): ボディの側面が平らになっているモデル。浮力が低く、パタパタと倒れ込むようなタイトな動き(ロール主体)で、強烈なフラッシング(光の反射)を生み出します。
【いつ使うの?】:水がクリアな時、早春や晩秋など水温が低下してバスの動きが鈍い時、またはプレッシャーが高くてファットクランクの強い動きを嫌う時に劇的に効きます。「食わせのクランク」と覚えてください。
4. 音の有無「サイレント vs ラトル」の選択
ルアーの中に金属やガラスの玉が入っていて、振ると「カラカラ」「ゴトゴト」と音が鳴るのがラトルイン、音がないのがサイレントです。
初心者は「サイレント(音なし)」か「低音(ゴトゴト音)」から揃えるのをおすすめします。 日本の野池やメジャーフィールドは常に人がルアーを投げているため、甲高い「ジャラジャラ」というラトル音は、逆にバスを警戒させてしまう(スレさせてしまう)ことが多いからです。 ただし、雨上がりで水がカフェオレのように濁った時や、風が強くて水面が波立っている時は、バスにルアーの存在を気付かせるために強いラトル音が必要になります。水の色に合わせて使い分けましょう。
5. 釣果を倍増させる!ただ巻き&+αのテクニック
さて、いよいよ実践的な使い方です。「ただ巻くだけ」からの脱却を目指しましょう。
基礎テクニック:巻きスピードの絶対基準
ルアーを巻くスピードは、早すぎても遅すぎてもいけません。基準は「ルアーがアクションを起こし、ブルブルという振動がロッドの先端(ティップ)に伝わってくる一番遅いスピード」です。これを基本(ミディアムリトリーブ)とし、濁っていれば少し早く、水温が低ければさらに遅く巻くのがセオリーです。
応用テクニック①:カバークランキング(ボトムノック)
前述した通り、クランクの真骨頂です。狙った水深よりも「あえて深く潜るクランク」を選びます。例えば水深1.5mの場所で、2m潜るMRを投げます。 すると、ルアーは底(ボトム)の石や泥をリップで叩きながら(ボトムノック)、砂煙を上げて進みます。これがエサを探すザリガニや、逃げ惑う小魚を演出するのです。
【コツ】:ゴツゴツと当てすぎる(強く巻きすぎる)とルアーが跳ねて不自然になります。ボトムを感じたら少し巻くスピードを緩め、「舐めるように」底を引いてくるのがキモです。
応用テクニック②:ライザーテクニック(浮上)
障害物にルアーが「ゴツッ」と当たったら、巻くのをピタッと止めてください。 クランクベイトは高い浮力を持っているため、止めると水面に向かって「フワ〜ッ」とバックしながら浮き上がります(ライザー)。この「浮上していく瞬間」に、後を追ってきたバスがたまらず口を使います。
【何秒待つ?】:障害物を完全にかわすまで、だいたい「1秒〜3秒」ほど止めます。浮上させて障害物をかわしたら、また巻き始めます。
6. 迷わないカラー選びと、タックルセッティング
カラー選びの3原則
お店に行くと無数のカラーがありますが、基本はこの3系統を持っていれば全国どこでも戦えます。
- アピール系(チャート・黒):濁った水(マッディ)や、ローライト(曇り・雨)の時に。特に「黒」は濁りの中で最もシルエットがはっきり出るため、一つは持っておくべきです。
- ナチュラル系(ワカサギ・アユ等の小魚色):水が綺麗(クリア)な場所で。フラットサイドクランクと相性が良いです。
- 赤系(レッド・クロー):春先の定番カラーです。ザリガニ(クロー)を模しているとも、スポーニング(産卵)を控えたバスを威嚇するためとも言われますが、とにかく春のシャローでは赤が圧倒的に強いです。
タックルセッティング:グラス vs カーボン、ライン、スナップ
【ロッドについて】 クランクベイトは常にブルブルと抵抗があるため、竿先が硬いとバスがバイトした時に弾いてしまいます。そのため、しなやかに曲がってバイトを絡め取る「グラスロッド(グラスコンポジット)」がベストとされています。 しかし、初心者がわざわざ専用のグラスロッドを買う必要はありません。最近のカーボンロッドの「M(ミディアム)アクション」で、竿全体が綺麗に曲がる「レギュラーテーパー(胴調子)」のものであれば十分に扱えます。
【ライン(糸)について】
- ナイロンライン(12〜16lb):しなやかで伸びがあるため、クランクの動きを妨げず、バイトを弾きにくいです。表層〜中層を巻くならナイロンがおすすめです。
- フロロカーボン(10〜14lb):伸びが少なく、擦れに強いため、石や倒木にガンガン当てる「カバークランキング」やボトムノックを多用するなら、フロロ一択です。現代の主流はこちらに傾いています。
【リールのギア比】 「ノーマルギア(ギア比6.0前後)」が最も一定のスピードで巻きやすく、ルアーの振動も感じやすいためベストです。
【スナップは必須?】 絶対につけてください。ラインをルアーのアイに直結びすると、結び目が支点になってしまい、クランクの本来の「ブルブル」というワイドなアクションを殺してしまいます。必ずルアースナップ(サイズは#1か#2)を介して接続してください。
7. 絶対に持っておきたいおすすめクランクベイト
「結局、どれを買えばいいの?」という方へ。数ある名作の中から「各カテゴリの最高傑作」と呼べる物を厳選しました。
【安くて釣れる!最初の1個に(SR / MR)】
■ ダイワ(DAIWA) ピーナッツ / ピーナッツ DR 「よく飛び・よく泳ぎ・よく釣れる」のキャッチコピーに嘘偽りなし。日本のバス釣りにおいて、おそらく最も多くのバスを釣ってきた超名作です。価格が非常に安いため、初心者が根掛かりを恐れずにカバーへ投げ込めるのが最大のメリット。迷ったらSR(シャロー)とDR(ミディアム〜ディープ)を一つずつ買いましょう。
【シャロークランクの絶対的エース(SR)】
■ O.S.P ブリッツ(BLITZ) 固定重心でありながら弾丸のように飛び、着水した瞬間にアクションを開始するレスポンスの良さは世界トップクラス。ラウンドとスクエアの中間のようなリップ形状で、どんな障害物もスルリとかわします。野池のオカッパリなら、これを投げておけば間違いありません。
【ディープクランク・ボトムノックの帝王(DR)】
■ エバーグリーン(EVERGREEN) コンバットクランク 320 / 400 深く潜るクランクは巻き抵抗が重く疲れるものですが、このルアーは信じられないほど軽く巻けます。圧倒的な飛距離で急潜行し、ボトムの地形を正確に手に伝えてくれます。ディープのブレイク(かけあがり)を攻めるなら必須のルアーです。
【春・タフコンディション用フラットサイド】
■ O.S.P タイニーブリッツ MR ※厳密にはセミフラットボディですが、フラットサイド的な「タイトな明滅アクション」と「食わせの小粒サイズ」を見事に両立しています。早春や、人が多くてプレッシャーが高い休日のメジャーフィールドにおいて、どうしても一本絞り出したい時に投げる「切り札」です。
まとめ:クランクベイトで「攻めの巻きの釣り」を展開しよう!
大変長くなりましたが、クランクベイトの奥深さがお分かりいただけたでしょうか。最後に、現場で実践してほしいポイントをまとめます。
- ルアーの潜る深さ(レンジ)と、底の深さを合わせる。
- 中層をただ巻くのではなく、ボトムや障害物に「あえて当てる」。
- 障害物に当たったら、巻くのを「止めて」、ルアーを浮上(ライザー)させて食わせの間を作る。
- ルアーの動きを殺さないよう、必ずスナップを使用する。
クランクベイトは、決して運任せに魚を釣るルアーではありません。 水中の見えない岩や木をリップで感じ取り、「ここに障害物がある。よし、当ててヒラを打たせて、浮かせて…食わせる!」と、アングラーの意図通りにバスを仕留めることができる、極めてマニュアルチックで戦略的なルアーなのです。
根掛かりを恐れず、ぜひ勇気を出して障害物周りにクランクベイトを投げ込んでみてください。リップが何かを乗り越えた直後、ロッドに伝わるあの強烈な「ゴンッ!」というリアクションバイトの衝撃は、あなたを一生クランクベイトの虜にすることでしょう。
もし、根掛かりしてしまったら…無理に引っ張らず、ラインを弓の弦のように弾いて(ビヨンビヨンと振動させて)、ルアーの浮力で自力でバックさせるように外してみてくださいね。




